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京都地方裁判所 昭和38年(ソ)3号 決定

決   定

京都府船井郡日吉町字木住小字脇谷垣内九番地

抗告人

湯浅加代

右代理人弁護士

森茂

同町字田原小字向段二七番地の一

相手方

栃下数義

右代理人弁護士

東茂

右当事者間の移送決定に対する抗告事件について、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

原決定を取消す。

抗告費用は相手方の負担とする。

理由

本件抗告理由の要旨は、「抗告人を原告、相手方を被告とする原審園部簡易裁判所昭和三八年(ハ)第一号持分所有権移転登記抹消登記請求事件の訴訟物は山林所有権であるが、訴訟物の価額は最高裁判所民事局長通知、訴訟物の価額の算定基準によるべきであるところ、同基準によれば、所有権の場合は目的たる物(山林)の価格であり、それは地方税法第三四九条の規定による固定資産税の課税標準となる価格とされるから、抗告人は訴状提出に当つて目的物所在地である日吉町長の固定資産評価額証明書(評価額一七、九九六円)を添付して、簡易裁判所事件として受理されたものである。しかるに原審裁判官勝本朝男が、訴訟物の価格が金一〇万円をこえるものとして、本件を京都地方裁判所園部支部に移送する旨の決定をしたのは失当であるから、その取消を求める。」というにある。

よつて判断するに、本件記録に徴すれば、相手方(原審被告)は昭和三八年二月二〇日の原審第一回口頭弁論期日において同月八日付答弁書を陳述しており、右答弁書によれば、相手方は管轄違の抗弁を提出せずして本案に付き弁論をなしたことが明らかであるからたとえ事物管轄に管轄違があつたとしても、専続管轄の定なき本件の場合、右期日に原審裁判所に管轄権が生じたものである。

そうだとすれば、訴訟物の価額について判断するまでもなく、原審裁判所は本件につき管轄権を有する。抗告人は応訴管轄の成立を抗告理由として主張していないけれども、移送決定に対する抗告裁判所は応訴管轄の成立を職権を以て判断し得るものと解するのを相当とする。

よつて本件を京都地方裁判所園部支部へ移送した原決定は失当であつて、本件抗告は理由があるから、民事訴訟法第四一四条、第三八六条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり決定する。

昭和三八年六月二九日

京都地方裁判所第二民事部

裁判長裁判官 小 西   勝

裁判官 乾   達 彦

裁判官 堀 口 武 彦

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